根本的な違いは、次のとおりです。

●民事信託の特色は、大雑把に申しますと、あくまでも本人に代わって本人の財産を
 管理することです。

●一方、成年後見制度の特色は、大雑把に申しますと、本人の代理人になることです。
法律が規定する代理人なので、法定代理人といったりします。

●成年後見人=本人の代理人という点から、成年後見は、代理権や、取消権、本人の
 財産管理、本人の療養看護、本人の意思の尊重等と権限や考慮事項が広がっていきます。
代理権や取消権を持つ点で、成年後見人の権限は、実に絶大といってもよいのです。

●成年後見制度と異なり、民事信託は、本人に代わって財産管理をするにすぎないため、
 代理権や、取消権という権限は出てきません。

●見方を変えると、民事信託と成年後見が重なる部分は、「本人の財産管理」の部分だけ
と言ってよいのです。さらに申しますと、民事信託では預かった財産だけが管理対象
です。一方、成年後見制度は、ほぼ全財産が管理対象となります。

●このように両者は、大きく権限に違いがあるのです。この点が、両者のメリットでもあ
 り、デメリットだったりします。その点は、今後ご説明して参ります。

●余談ですが、民事信託が成年後見の代替手法という説明や、民事信託が成年後見を補完
 する手法という説明が散見されます。しかし、それは、上記のとおり、妥当ではないと
 言わざる負えません。