●先日、次のように成年後見制度の財産管理のデメリットをまとめました。
①初期コストとランニングコストがかかる。
②本人のため以外の支出は、まず難しい。
③面識のない第三者が成年後見人になる場合が多い。

●このようなデメリットから成年後見制度に対してネガティブなイメージを持つ本人のご家族の方も多いです。また、民事信託の優位性を語るために、成年後見のデメリットだけに照準を合わせて、ネガティブキャンペーンを行う方もいらっしゃるようです。

●たしかに、特定の思惑がある家族にしてみれば、デメリットだらけです。コストがかかることにより、相続できる財産がいくらか減る。本人の財産管理に一切関与できなくなる。まして、知らない第三者から本人の財産を抑えられるわけですから。

●しかし、見方を変えると、このような家族のデメリットは、本人にとっては、むしろメリットと言えます。

●まず、本人に必要のない支出は認められなる点は、本人の生活維持には有益ではなないでしょうか。

●次に、第三者が成年後見人になる点は、財産管理上、中立性が保たれますので、これも本人にとっては有益ですし、親族間が対立している等の場合、その親族にとっても悪くないことだと言えます。

●最後に、コストです。最も目に付きやすく、一番嫌がられる点ではないでしょうか。特に成年後見人の報酬が発生する点が嫌がられますね。しかし、次のような点に着目して見て下さい。(1)まず成年後見人の報酬は、裁判所が財産規模と一定基準によって判断するため、上限があり、まず法外にならないです。逆に言うと、成年後見人が勝手に自分の報酬を決めることはできない点で、抑制が効いているのです。(2)次に、費用対効果で考えるべきです。コストだけを見ずに、「コスト」と「成年後見のメリット」を合わせて検討する必要があります。

●以上のとおり、よく言われる成年後見制度のデメリットは、透明性をもって本人の財産と権利を管理することの裏返しといってもよいでしょう。

●しかし、です。だからといって、「成年後見が最高です!」と言う気は全くありません。
以前からの繰り替えしになりますが、パブリックな財産管理である「成年後見制度」とプライベートな財産管理である「民事信託」のどちらか利用するかは、「本人の家族関係」や「本人の財産状況」等を考慮して、検討すべきなのです。各制度の優劣・善し悪しといった抽象論ではなく、本人の状況にいかにマッチするかが選択の基準なのです。