5.「家族信託」と「成年後見制度」は、どんな違いがありますか。
家族信託と成年後見制度は、全く異なる制度ではありません。また、家族信託が成年後見制度を補完するものでもありません。ましてや対立する制度でもありません。
むしろ、家族信託と成年後見制度は、認知症等の親Aさんに代わって、親Aさんの財産をきっちりと管理するという点で共通しています。
では、家族信託と成年後見制度の違いは、何でしょうか。それは、親Aさんの財産管理をそのご家族が行うか、他人(成年後見人や裁判所)に任せるかという点です。
以下、その相違点のまとめとなります。
相違点1:スタート時点について
各種制度 | いつから始めることができるか。 | どうやったら始まることができるか。 |
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成年後見制度 | 親Aさんが認知症などになった後から | 裁判所への申立 |
家族信託 | 親Aさんが認知症などになる前まで ※1 | 家族間の契約締結 |
※1親Aさんが認知症などになった場合、家族信託の利用は困難になります。
相違点2:当事者の選定とその報酬について
各種制度 | 誰が当事者を決めるのか | 報酬を支払う必要があるか | 報酬額は誰がきめるか |
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成年後見制度 | 裁判所が成年後後見人を専任する※1 | 必要あり。 | 裁判所が報酬額を決定する※2 |
家族信託 | 家族の話し合いによる | 家族の話し合いによる | 家族の話し合いによる |
※1 現状では、認知症になった親Aさんに一定の財産があると、そのご家族が成年後見人に選任されることは困難です。
※2 認知症になった親Aさんの財産額に比例して、報酬額が変わります。なお、その報酬額は親Aさんのご家族に通常知らされません。
相違点3:財産の選択とその管理処分について
各種制度 | 財産の選択ができるか | 財産の管理は 誰が行うか | 財産の処分(売却・賃貸など) は誰が行うか | 財産の管理処分について 誰に報告するか |
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成年後見制度 | 全財産が対象となる | 成年後見人が管理する | 裁判所の許可・事前相談の↑、成年後見人が行う | 裁判所に報告する |
家族信託 | 家族の話し合いによる | 契約ん従って、家族が管理する | 契約に従って、家族が行う | 親Aさんや子Bさんの信託監督人等(もしいれば)に報告する |
相違点4:代理権・取消権・同意権の有無について
各種制度 | 認知症の親に代わって、 各種契約締結や各種訴訟をできるか (いわゆる代理権) | 認知症の親が独断で締結した、 契約を取り消したり、同意することができるか (いわゆる取消権と同意権) |
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成年後見人 | ○ できる | ○ できる |
家族信託 | ✕ 出来ない※3 | ✕ 出来ない |
※3 家族信託において、認知症になった親Aさんに代わって、財産を預かったそのご家族は、その財産について名義人(所有者)です。したがって、名義人(所有者)として、預かっている財産について、各種契約や各種訴訟はできます。例えば、アパートを預かっている場合、新たな賃貸借契約や立退訴訟を行えます。しかし、預かっていない財産については、何も権限がありません。
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このことから次のことが言えます。
成年後見人とは、本人の代理人ですが、家族信託によって財産を預かる方は、あくまでも預かった財産だけの管理人ということです。
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この両制度の特徴を区別して、どちら選択するか検討する必要があります。この点、ぜひご相談ください。
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